救急救命士を取ると消防士の給料は上がる?条例で見る手当の差は1回110〜360円|取得翌月に消防士長になった現役14年目のリアル

救急車と救急救命士のイメージ 消防士のリアル

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「救急救命士を取ると給料が上がるの?」——消防士なら一度は気になる疑問だ。

結論から言う。自治体によって異なるが、体感では昇給しているところが多い。ただし、私自身は昇給がなかった。その代わり、昇任(消防士長)につながった。

私は現役14年目の消防士で、消防8年目のタイミングで救急救命士を取得した。給与への影響、現場での変化、取得ルートのリアルをすべて話す。

📋 この記事を読むと分かること

  • 救急救命士を取ると給与・待遇はどう変わるか(自治体別の実態)
  • 昇給なしでも「昇任」につながった筆者のリアルな体験
  • 救急救命士が行える「特定行為」の正確な内容
  • 消防士から取得するルート(エルスタ派遣・半年間の実態)
  • 専門学校ルートが採用試験で有利になる理由
消防士utaka
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正直、手当の額だけ見ると“割に合う?”と感じる人もいるかも。でも現場でできることが増える価値は、お金以上に大きいです。

    1. 📋 この記事を読むと分かること
  1. 救急救命士を取ると給料は上がるの?——正直に答える
    1. 公式の条例で見る:救急救命士の手当はいくら違う?
    2. 私の場合:3月に取得、翌4月にすぐ昇任
  2. そもそも救急救命士とは?——何ができるかを正確に知っておこう
    1. ① 心肺機能停止状態への処置(心臓か呼吸のどちらかが止まっている)
    2. ② 心肺停止(心臓・呼吸の両方が止まっている)への処置
    3. ③ 心肺停止前の患者への処置
  3. 救急救命士になるルート——消防士からの道と最初から目指す道
    1. ルート①:消防士として採用されてからエルスタへ(私のルート)
    2. エルスタ派遣の選抜試験は、こうだった
    3. エルスタの半年間:給料は出る。でも手当が消える
    4. ルート②:専門学校・大学で資格を取ってから消防士を目指す
  4. 国家試験の難易度——合格率は高めだが油断は禁物
  5. 国家試験の勉強:研修中より「派遣される前」が勝負だった
  6. 取得後、現場はどう変わったか
  7. 正直、「割に合わない」と感じた瞬間
  8. 後輩に勧めるか?——「マンネリしている人」には勧めている
  9. よくある質問
    1. Q. エルスタに派遣される条件は?
    2. Q. 研修中の給料はどうなりますか?
    3. Q. 何年目で行けますか?
    4. Q. 派遣制度そのものがない本部もありますか?
    5. Q. 昇任にはどう効きますか?
  10. まとめ——給与だけじゃない、救急救命士を取る価値

救急救命士を取ると給料は上がるの?——正直に答える

結論は「自治体次第」だ。ただし、私が周囲の消防士から聞いている限り、体感では昇給しているところが多い。公開されている条例を見ると、救急出動1回ごとの手当を、救急救命士だけ高くしている消防本部があります(下で実例を紹介)。

一方、私が勤務する消防本部では、救急救命士を取得しても昇給はなかった。ただ、昇任選考で評価され、消防士長に昇任することができた。給与の上がり方は直接的ではなかったが、キャリアとして確実にプラスに働いた。

まとめるとこうなる。

パターン 内容
✅ 給与の上乗せあり(体感では多い) 救急出動1回ごとの手当に差をつける(実例は下の表)または定期昇給がその年だけ少し高くなる自治体
➡️ 昇給なし・昇任あり(筆者) 手当の差はないが昇任選考で有利に働いたケース
❌ 変化なし 昇給・手当の制度がない自治体(一部)

受験前に、自分が目指す消防本部の「出場手当の差や昇給制度の有無」を確認しておくことをおすすめする。採用情報や給与規程に記載されていることが多い。

公式の条例で見る:救急救命士の手当はいくら違う?

「手当に差をつける」とは具体的にどういうことか。各自治体が公開している条例・規則から、救急出動の手当を3つ並べてみます。

消防本部 救急隊員 救急救命士
東京消防庁 1回350円 1回460円(救急救命処置等に従事した場合)
横須賀市 1回150円 1回510円(救急救命処置を行った場合)
福岡市 1回170円 1回300円(救急救命士等が行う業務)

出典:東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例施行規則(別表「救急手当」)/横須賀市消防吏員特殊勤務手当支給条例(第3条)/福岡市職員の特殊勤務手当に関する条例施行規則(第15条)。2026年10月に確認。条件の細部は各条文を確認してください。

差は1回あたり110〜360円ほど(福岡市には、救急救命士等が特定行為を行ったときの手当が、別の区分で1回640円あります)。「毎月◯万円の資格手当」というより、出動のたびに少しずつ上乗せされる形です。出動件数が多い救急隊ほど積み重なりますが、これだけで年収が大きく変わるほどではありません。

私の本部は、こうした救命士の上乗せがない側でした。だからこそ、次に書く「昇任」のほうが、私にとっては大きな変化でした。

私の場合:3月に取得、翌4月にすぐ昇任

時系列で書くとこうなります。

  • 消防8年目の3月に国家試験合格・救急救命士を取得
  • 翌月の4月、消防士長に昇任

つまり、取得とほぼ同時に昇任しました。
基本給の昇給や資格手当はありませんでしたが、救急救命士の取得は昇任選考で評価されたと感じています。

「給料は上がるのか」という問いに対する私の答えは、「資格そのものでは上がらなかった。でも階級が上がり、昇任分として月1,000〜2,000円ほどは増えた」です。

そもそも救急救命士とは?——何ができるかを正確に知っておこう

救急救命士は1991年(平成3年)の救急救命士法によって生まれた国家資格だ。医師の指示のもとで「特定行為」と呼ばれる高度な処置が行える。普通の救急隊員とは、できることの幅が大きく違う。

特定行為は、患者の状態によって3つに分類される。

① 心肺機能停止状態への処置(心臓か呼吸のどちらかが止まっている)

  • 食道閉鎖式エアウェイ・ラリンゲアルマスクによる気道確保(年齢制限なし)——呼吸機能停止のみでも適応
  • 静脈路確保・輸液(年齢制限なし)

② 心肺停止(心臓・呼吸の両方が止まっている)への処置

  • 気管内チューブによる気道確保——概ね15歳以上・異物窒息または医師の具体的指示が条件
  • アドレナリン(エピネフリン)投与——心臓機能停止・8歳以上が条件

③ 心肺停止前の患者への処置

  • 静脈路確保・輸液——ショック状態・クラッシュ症候群(15歳以上)
  • ブドウ糖溶液投与——血糖値50mg/dl未満の低血糖発作(15歳以上)

👉 救急隊員と救急救命士の「できる処置」の違いや、救急隊員になるまでの流れは 救急隊員になるには?資格は「救急科」250時間の修了|救急救命士・消防隊との違い にまとめました。

救急救命士になるルート——消防士からの道と最初から目指す道

ルート①:消防士として採用されてからエルスタへ(私のルート)

消防士として採用後、職場内の選抜試験でトップを取り、自治体から救急救命士研修所(通称:エルスタ)に派遣してもらうルートだ。「待っていれば行ける」ものではなく、自分で掴み取るものだと理解しておこう。

エルスタでの研修期間は約半年(6ヶ月)だ。この期間は消防署を離れ、研修所で救急医療に特化した知識と技術を集中的に学ぶ。研修修了後に国家試験を受験し、合格すれば救急救命士になれる。

派遣のタイミングは自治体によって大きく異なる。早い人は3〜4年目で派遣されることもあるが、私のように8年目というケースも珍しくない。選抜試験に合格しても、消防本部の救急救命士の充足状況によって時期が左右される。
さらに重要な点として、そもそもエルスタへの派遣制度を持たない自治体も存在する。有資格者の採用のみで救急救命士を確保している消防本部では、職員がどれだけ希望しても職場から取得する道がない。受験前に派遣制度の有無を確認することは必須だ。

エルスタ派遣の選抜試験は、こうだった

「職場内の選抜試験でトップを取る」と書きましたが、その中身を具体的に書いておきます。

  • 試験は筆記のみ。体力試験や面接はなかった
  • 出題は主に過去の国家試験問題
  • 所属で1位の成績を取れば派遣候補になる
  • 私のときは5人が受験した

ここで大事なのは、「1位を取れば自動的に行ける」わけではないという点です。

派遣には費用がかかります。所属の消防本部が派遣のための予算を確保していることが前提で、そのうえで1位の成績が必要になります。逆に言えば、予算がない年は、どれだけ成績が良くても派遣されません。

だから私は「待っていれば行ける」ではなく「自分で掴み取る」と書いています。
試験で1位を取ることと、派遣枠がある年に当たること。この2つが揃って初めて道が開きます。

エルスタの半年間:給料は出る。でも手当が消える

ここは受験前に知っておいてほしい、お金の話です。

研修は業務の一環なので、給料は通常どおり支給されます。身分は消防職員のままです。

ただし、私の本部では、研修所にいる間は平日勤務の扱いで、休日の勤務もありませんでした。
そのため、ふだんの24時間勤務で付いていた、次のような手当がなくなりました。

  • 夜間勤務手当:夜中の勤務に付く手当
  • 休日手当:祝日や年末年始の勤務に付く手当

私の場合、手当の中でいちばん大きいのが休日手当です。
その休日手当まで付かなかったので、手取りは大幅にダウンしました。
「救急救命士を取ると給料が上がるのか」という記事で書くのは少し皮肉ですが、取得までの半年間は、むしろ下がると思っておいてください。

生活面はこうでした。

  • 寮生活。週末は家に帰れるが、外泊届が必要
  • 平日は朝から夕方まで座学と実技訓練
  • これがそのまま業務。休みではない

家族がいる人は、半年間の収入減と、平日は家にいられないことを、事前に家族と共有しておくべきです。

ルート②:専門学校・大学で資格を取ってから消防士を目指す

救急救命士養成課程がある専門学校や大学で学び、卒業・国家試験合格後に消防官採用試験を受けるルートだ。

このルートの大きなメリットが、採用試験での有資格者枠だ。多くの消防本部では「救急救命士有資格者」の採用枠を別途設けているところがある。一般枠より競争が緩やかになるケースもあり、資格を持って受けることが採用に有利に働く。

また、資格を持って採用されるため、消防学校と就業前の病院実習を終えればすぐに救急救命士として活動でき、ルート①と比べてより早く戦力になれるというメリットもある(気管挿管や薬剤投与には、さらに別の認定が必要)。

国家試験の難易度——合格率は高めだが油断は禁物

救急救命士の国家試験の合格率は、近年90%台と高い水準だ(第46〜49回:93.8%→94.2%→94.4%→94.9%)。ただし、これはエルスタや大学でしっかり準備してきた人が受ける試験での数字。出題範囲は解剖生理学・病態生理学・救急救命処置・関係法規など広く、約半年の研修期間は試験対策の意味でも濃密な時間になる。

※出典:一般財団法人 日本救急医療財団「救急救命士国家試験」(2026年9月確認)

国家試験の勉強:研修中より「派遣される前」が勝負だった

研修所では、カリキュラムに沿って授業と訓練が進みます。私はそれに加えて、その日の講義の振り返りを毎日続け、余裕がある日は翌日の予習もしました。ここまでは、おそらく誰でもやることです。

ただ、振り返って本当に効いたのは、派遣される前の自主勉強でした。

理由は、前に書いた選抜試験にあります。
選抜試験の出題は過去の国家試験問題が中心です。つまり、選抜試験に向けて勉強した内容が、そのまま国家試験の土台になります。

選抜試験で1位を取るために積み上げた知識を持って研修所に入ると、試験範囲の基礎は「確認」で済むようになります。その分、研修所の講義で本当に価値があった教授の臨床の話や発展的な内容を吸収する余裕が生まれます。半年という期間は、ゼロから始めるには短く、土台があれば十分な長さです。

派遣が決まってから慌てるのではなく、派遣を目指した時点から国家試験の勉強が始まっている。私の実感はこれです。

👉 使った問題集2冊・1日3時間×1年の手順・苦手の克服法は 救急救命士国家試験の勉強法 にまとめました。

取得後、現場はどう変わったか

給与の話ばかりしてきたが、現場でも確実に変化があった。

以前は「患者を病院に運ぶ」という感覚だったものが、取得後は「病院に着くまでの間に何ができるか」という思考に変わった。特定行為を使う場面は多くはないが、いざというときに迷わず動けるかどうかが患者の命に直結する——それを実感できるようになったのが一番大きな変化だ。

👉 消防士の年収リアル事情はこちら

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資格を取って一番変わったのは“目の前の命にできることが増えた”という実感でした。

👉 消防士のリアルをまとめて知りたい方はこちら:消防士のリアル完全ガイド

正直、「割に合わない」と感じた瞬間

良いことばかり書いても信用されないので、正直に書きます。

資格を取って、責任は明らかに増えました。特定行為ができるということは、その判断と結果を引き受けるということです。

そして、あまり語られない部分ですが、事務処理も増えました。処置に関わる記録や報告は、資格のない隊員より確実に多くなります。

手当がつかない本部で、責任と事務だけが増える。
数字だけを見れば「割に合わない」と言われても反論はできません。

それでも私は、今のほうが充実して業務に取り組めています。
「運ぶ」だけだった仕事が「病院に着くまでに何ができるか」を考える仕事になった。この変化は、手当の有無とは別のところにある価値だと思っています。

後輩に勧めるか?——「マンネリしている人」には勧めている

後輩から相談されることがあります。私が勧めているのは、仕事にマンネリを感じている後輩です。

同じ現場、同じ動き、同じ結果。数年経つと、消防の仕事にはそういう時期が来ます。
救急救命士を目指す過程は、選抜試験の勉強・半年の研修・国家試験と、強制的に「学び直す」期間になります。マンネリを断ち切るには、これ以上のものはないと思っています。

逆に、「手当が欲しいから」だけで目指すなら、本部の制度を先に確認してください。私のように手当がつかない本部なら、動機がそこだけだと途中で折れます。

よくある質問

Q. エルスタに派遣される条件は?

私の所属では、筆記の選抜試験で所属1位を取ること、そしてその年に本部が派遣予算を確保していることの2つでした。制度は本部ごとに違うので、まず自分の本部の制度を確認してください。

Q. 研修中の給料はどうなりますか?

給料は通常どおり出ます。ただし私の本部では、研修中は平日勤務の扱いで、夜間勤務手当や休日手当などが付きませんでした。そのため、手取りは大幅に下がりました。半年間の収入減は覚悟しておいてください。

Q. 何年目で行けますか?

本部によって大きく違います。3〜4年目で行く人もいれば、私のように8年目のケースもあります。成績だけでなく、本部の充足状況と予算次第です。

Q. 派遣制度そのものがない本部もありますか?

あります。有資格者の採用だけで救急救命士を確保している本部では、職員が希望しても職場から取得する道がありません。受験前に必ず確認してください。

Q. 昇任にはどう効きますか?

私の場合は取得の翌月に消防士長に昇任しました。私の本部では基本給の昇給はありませんでしたが、昇任選考で評価されたと感じています。昇任の決まり方は本部ごとに違うので、目指す本部の制度も確認してください。

👉 消防士の昇任試験がない本部では、どうやって昇任が決まる?|試験なしで消防士長になった現役14年目が正直に解説

まとめ——給与だけじゃない、救急救命士を取る価値

救急救命士を取ると給与が上がるかどうかは、自治体次第だ。ただ、体感では昇給制度を持つ消防本部の方が多い。受験前に自分の目指す消防本部の制度を確認することを強くすすめる。

昇給がなかった私でも、昇任というかたちでキャリアにプラスになった。給与の数字だけで判断するのではなく、現場で何ができるようになるか、キャリアとしてどう活きるかという視点で考えてほしい。

消防士を目指している段階で救急救命士も視野に入れているなら、専門学校ルートで有資格者として採用試験に臨む選択肢も十分に価値がある。

👉 消防士の1日のリアルなスケジュールはこちら

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