「救急救命士を取ると給料が上がるの?」——消防士なら一度は気になる疑問だ。
結論から言う。自治体によって異なるが、体感では昇給しているところが多い。ただし、私自身は昇給がなかった。その代わり、昇任(消防士長)につながった。
私は現役14年目の消防士で、消防8年目のタイミングで救急救命士を取得した。給与への影響、現場での変化、取得ルートのリアルをすべて話す。
📋 この記事を読むと分かること
- 救急救命士を取ると給与・待遇はどう変わるか(自治体別の実態)
- 昇給なしでも「昇任」につながった筆者のリアルな体験
- 救急救命士が行える「特定行為」の正確な内容
- 消防士から取得するルート(エルスタ派遣・半年間の実態)
- 専門学校ルートが採用試験で有利になる理由
救急救命士を取ると給料は上がるの?——正直に答える
結論は「自治体次第」だ。ただし、私が周囲の消防士から聞いている限り、体感では昇給しているところが多い。救急救命士の資格手当として毎月数千円〜数万円が加算される仕組みを持っている消防本部は少なくない。
一方、私が勤務する消防本部では、救急救命士を取得しても昇給はなかった。ただ、昇任選考で評価され、消防士長に昇任することができた。給与の上がり方は直接的ではなかったが、キャリアとして確実にプラスに働いた。
まとめるとこうなる。
| パターン | 内容 |
| ✅ 昇給あり(多数派) | 出場手当に差をつける(例:救急出場手当が救命士は200円→300円)または定期昇給がその年だけ少し高くなる自治体 |
| ➡️ 昇給なし・昇任あり(筆者) | 手当の差はないが昇任選考で有利に働いたケース |
| ❌ 変化なし | 昇給・手当の制度がない自治体(一部) |
受験前に、自分が目指す消防本部の「出場手当の差や昇給制度の有無」を確認しておくことをおすすめする。採用情報や給与規程に記載されていることが多い。
そもそも救急救命士とは?——何ができるかを正確に知っておこう
救急救命士は1991年(平成3年)の救急救命士法によって生まれた国家資格だ。医師の指示のもとで「特定行為」と呼ばれる高度な処置が行える。普通の救急隊員とは、できることの幅が大きく違う。
特定行為は、患者の状態によって3つに分類される。
① 心肺機能停止状態への処置(心臓か呼吸のどちらかが止まっている)
- 食道閉鎖式エアウェイ・ラリンゲアルマスクによる気道確保(年齢制限なし)——呼吸機能停止のみでも適応
- 静脈路確保・輸液(年齢制限なし)
② 心肺停止(心臓・呼吸の両方が止まっている)への処置
- 気管内チューブによる気道確保——概ね15歳以上・異物窒息または医師の具体的指示が条件
- アドレナリン(エピネフリン)投与——心臓機能停止・8歳以上が条件
③ 心肺停止前の患者への処置
- 静脈路確保・輸液——ショック状態・クラッシュ症候群(15歳以上)
- ブドウ糖溶液投与——血糖値50mg/dl未満の低血糖発作(15歳以上)
救急救命士になるルート——消防士からの道と最初から目指す道
ルート①:消防士として採用されてからエルスタへ(私のルート)
消防士として採用後、職場内の選抜試験でトップを取り、自治体から救急救命士研修所(通称:エルスタ)に派遣してもらうルートだ。「待っていれば行ける」ものではなく、自分で掴み取るものだと理解しておこう。
エルスタでの研修期間は約半年(6ヶ月)だ。この期間は消防署を離れ、研修所で救急医療に特化した知識と技術を集中的に学ぶ。研修修了後に国家試験を受験し、合格すれば救急救命士になれる。
派遣のタイミングは自治体によって大きく異なる。早い人は3〜4年目で派遣されることもあるが、私のように8年目というケースも珍しくない。選抜試験に合格しても、消防本部の救急救命士の充足状況によって時期が左右される。
さらに重要な点として、そもそもエルスタへの派遣制度を持たない自治体も存在する。有資格者の採用のみで救急救命士を確保している消防本部では、職員がどれだけ希望しても職場から取得する道がない。受験前に派遣制度の有無を確認することは必須だ。
ルート②:専門学校・大学で資格を取ってから消防士を目指す
救急救命士養成課程がある専門学校や大学で学び、卒業・国家試験合格後に消防官採用試験を受けるルートだ。
このルートの大きなメリットが、採用試験での有資格者枠だ。多くの消防本部では「救急救命士有資格者」の採用枠を別途設けているところがある。一般枠より競争が緩やかになるケースもあり、資格を持って受けることが採用に有利に働く。
また、採用された段階から救急救命士として現場で特定行為が行えるため、ルート①と比べてより早く戦力になれるというメリットもある。
国家試験の難易度——合格率は高めだが油断は禁物
救急救命士の国家試験の合格率は例年80〜90%台と高い水準だ。ただし、これはエルスタや大学でしっかり準備してきた人が受ける試験での数字。出題範囲は解剖生理学・病態生理学・救急救命処置・関係法規など広く、約半年の研修期間は試験対策の意味でも濃密な時間になる。
取得後、現場はどう変わったか
給与の話ばかりしてきたが、現場でも確実に変化があった。
以前は「患者を病院に運ぶ」という感覚だったものが、取得後は「病院に着くまでの間に何ができるか」という思考に変わった。特定行為を使う場面は多くはないが、いざというときに迷わず動けるかどうかが患者の命に直結する——それを実感できるようになったのが一番大きな変化だ。
まとめ——給与だけじゃない、救急救命士を取る価値
救急救命士を取ると給与が上がるかどうかは、自治体次第だ。ただ、体感では昇給制度を持つ消防本部の方が多い。受験前に自分の目指す消防本部の制度を確認することを強くすすめる。
昇給がなかった私でも、昇任というかたちでキャリアにプラスになった。給与の数字だけで判断するのではなく、現場で何ができるようになるか、キャリアとしてどう活きるかという視点で考えてほしい。
消防士を目指している段階で救急救命士も視野に入れているなら、専門学校ルートで有資格者として採用試験に臨む選択肢も十分に価値がある。

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