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「その練習、強度が高すぎるよ。」
消防士ランナー歴8年目の筆者が、職場の先輩ランナーに言われた一言です。
当時の私は、1,500mで4分30秒を切るために「400m×8本をレスト1分で70秒切りで走らないとダメだ」と思い込み、毎回の練習でそのタイムに届かないことに焦っていました。
今思えば、完全にオーバーペースでした。
その先輩は学生時代から陸上を続けているランナーで、私にすすめてくれたのが「ダニエルズのランニングフォーミュラ」という本でした。
この記事では、その本との出会いと、ダニエルズ理論の核心をまとめます。
📋 この記事を読むと分かること
- ダニエルズのランニングフォーミュラとはどんな本か
- VDOTの概念と5つのペース体系(E・M・T・I・R)
- 「目標タイム逆算」ではなく「現在の実力ベース」で練習する考え方
この本にたどり着いたきっかけ
当時の私の練習は、こんな考え方がベースでした。
「目標タイムを切るには、練習でもそのペースかそれ以上で走らなければ意味がない。」
1,500m 4分30秒切りを目指して400m×8本を70秒切り(レスト1分)、5,000m 17分切りを目指して1,000mを3分20秒ペースで走る——ネット上にある「目標タイム逆算型」の情報を参考にしたものでした。
一見、筋が通っているように見えます。
しかし問題はペースの設定でした。
400mを72秒(キロ3分ペース)で走るというのは、1,500mのレースペースそのものです。インターバル練習でレースペースかそれ以上を出し続けるのは、体への負担が過剰すぎました。
ジョグも自然とペースが上がり、気づけば週のすべての練習が高強度になっていました。
そんな状態を見ていた職場の先輩から、一冊の本をすすめられました。
先輩自身も学生時代から陸上を続けており、ダニエルズ理論を実践することで32歳で5,000mのタイムを15分40秒から15分20秒に更新したというのです。
年齢を重ねてなお自己ベストを更新できた——その事実が、私にとって何より説得力がありました。
ジャック・ダニエルズとはどんな人物か
ジャック・ダニエルズ(Jack Daniels)は、アメリカのランニングコーチで、スポーツ生理学の博士号を持ちます。
オリンピック競歩の銀メダリストでもあり、長年にわたって中長距離ランナーの指導を続けてきた人物です。
著書「Daniels’ Running Formula(ダニエルズのランニングフォーミュラ)」は、「世界一のランニングコーチ」とも称されるほど世界中のランナーに読まれているバイブルです。
現在は第4版まで改訂されており、最新の運動生理学に基づいた練習理論が体系化されています。
ダニエルズ理論の核心——VDOTとは何か
ダニエルズ理論の出発点は「VDOT(ブイドット)」という指標です。
VDOTとは、直近のレースタイムをもとに算出された「現在の自分の有酸素能力の指標」です。
たとえば、5,000mを20分30秒で走ったなら、VDOTはおよそ44。
このVDOT値から、E・M・T・I・Rの各ペースが自動的に算出されます。
「目標タイムから逆算して無理なペースを設定する」のではなく、「今の実力から科学的に導き出されたペースで練習する」——これがダニエルズ理論の根本的な考え方です。
| 5,000mタイム | VDOT | Eペース(/km) | Tペース(/km) | Iペース(/km) |
| 約20分30秒 | 42 | 6:10 | 5:07 | 4:51 |
| 約18分40秒 | 46 | 5:44 | 4:45 | 4:30 |
| 約17分10秒 | 50 | 5:22 | 4:27 | 4:13 |
| 約15分50秒 | 55 | 4:57 | 4:06 | 3:54 |
自分のVDOTと各トレーニングペースは、公式の無料ツールで確認できます。
👉 VDOT Running Calculator(vdoto2.com)
レースタイムを入力するだけで、E・T・I・Rの各ペースが自動算出されます。
なお、詳細なVDOT表と練習プランはダニエルズの著書に掲載されています。
私がかつてやっていた「400mを70秒切り・1,000mを3分20秒」という設定は、レースペース近辺の強度でした。
VDOTから算出されるIペースはそれよりも適切な強度に収まるため、全本数を同じペースで走りきれるようになります。
「目標タイムから逆算して無理なペースを設定する」のではなく、「今の実力から科学的に導き出されたペースで練習する」——これがダニエルズ理論の根本的な考え方です。
5つのペース体系——E・M・T・I・R
ダニエルズ理論では、練習を目的別に5つのペースに分類します。それぞれの役割を理解することが、練習を正しく組み立てる第一歩です。
| 記号 | 名称 | 強度の目安 | 主な目的 |
| E | イージー(Easy) | 会話ができる楽なペース | 回復・有酸素の土台づくり |
| M | マラソンペース | ある程度余裕がある | マラソン特異的な有酸素能力 |
| T | 閾値(Threshold) | きついが維持できる | 乳酸閾値の向上 |
| I | インターバル | 会話できないきつさ | VO2maxの向上 |
| R | レペティション | 全力に近いスピード | スピード・走りの効率向上 |
大切なのは、練習の約75〜80%をEペース(ジョグ)で占めることです。
残りをT・I・Rペースで構成します。Iペースは消耗が大きく、週1回が限度です。
以前は週2回こなすこともありましたが、疲労が抜けないまま続けた結果、怪我につながりました。
ダニエルズ理論を実践して変わったこと
最も大きな変化は、ジョグに「きちんとした目的」が生まれたことです。
Eペースは「楽に会話できる程度」とされますが、決して極端に遅いペースではありません。自分のVDOTから算出されたEペースを守ることで、疲労を残さず走れる感覚がつかめるようになりました。
以前は強度の根拠がないまま「なんとなく速め」のジョグをしていたため、脚の疲れが抜けにくい状態が続いていました。
その代わり、週に1〜2回のIペース練習(インターバル走)で、きちんとVO2maxへの刺激を入れる。
この「楽な日は徹底的に楽に、きつい日はきちんときつく」という強弱のメリハリが、疲労を溜めずに練習を継続できる理由です。
そして先輩の言葉通り、練習の質は上がり、体の回復も明らかに早くなりました。
消防士として不規則な勤務がある中でも、このメリハリのある練習スタイルはとても相性がよいと感じています。
各練習メニューの詳しい解説はこちら
このシリーズでは、ダニエルズ理論の各ペースを個別に詳しく解説しています。
まとめ
- 目標タイムから逆算して無理なペースで練習するのは、疲労蓄積の原因になる
- VDOTは「今の実力」から科学的にペースを算出する指標。まずここから始める
- 5つのペース(E・M・T・I・R)それぞれに明確な目的がある
- 練習の75〜80%はEペース(ジョグ)。楽な日は徹底的に楽に走る
- 職場の先輩は32歳でこの理論を実践し、5,000mを15分40秒→15分20秒に更新
ランニングは「頑張れば速くなる」だけではありません。正しい強度で、正しい目的の練習を積み重ねることが、怪我をせずに長く速くなり続ける方法だと、この本を読んで実感しています。
ぜひ一度、手に取ってみてください。
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私と職場の先輩、ふたりの消防士ランナーが実践しているランニングのバイブルです。


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