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1キロ何分で走れば練習になるのか、長い間ずっと感覚で決めていました。
消防士になってランニングを始めたころ、「きつければきついほどいい」と思っていました。速く走れば走るほど強くなると信じていた。でもそれが間違いだったと気づいたのは、ダニエルズのランニングフォーミュラという本に出会ってからです。
その本の中で紹介されていたのが「VDOT」という概念です。レースタイムから自分のVO2maxを推定し、5つのトレーニングゾーンのペースを一気に導き出せる仕組み。これを知ってから、「今日は何ペースで走るか」がはっきり決まるようになりました。
ランニング歴8年目、1500m 4分30秒・3km 9分45秒・5km 16分58秒で走っている消防士ランナーが、VDOTの使い方を正直に解説します。
📋 この記事を読むと分かること
- VDOTとは何か・なぜペースの基準になるのか
- 自分のVDOTをレースタイムから調べる方法
- VDOTから5つのトレーニングペースを決める方法
- VDOT 59(5km 16分58秒)の具体的なペース例
VDOTとは何か
VDOTとは、ジャック・ダニエルズ博士が考案したトレーニング指標です。VO2max(最大酸素摂取量)をレースタイムから推定した値のことで、「実効VO2max」とも言えます。
VO2maxは本来、研究室でのガスマスクを使った測定が必要です。しかしVDOTは実際のレースタイムを使うので、誰でも自分の値を計算できます。
重要なのは、VDOTが単なる数字ではなく「今の自分が安全かつ効果的に練習できるペースの基準」になる点です。EペースからRペースまでの5つのトレーニングゾーンが、VDOTの値から自動的に決まります。
自分のVDOTを調べる方法
VDOTを調べるには、直近の全力レースのタイムが必要です。練習タイムや「調子のよかった日のペース」ではなく、レースでしっかり走り切ったときのタイムを使います。
① 使えるレース距離
- 1500m・1マイル
- 3000m・5000m
- 10km・ハーフマラソン・フルマラソン
VDOTを計算するなら、5km〜10kmのレースタイムが最も正確です。距離が短くなるほど、酸素を使わない「無酸素系」のエネルギーが多く混ざり込み、VDOTが実力よりも高めに出ることがあります。
1500mや3kmでも目安にはなりますが、理想は5km以上のタイムで計算することを覚えておいてください。
② 計算ツールを使う
VDOTの計算は手計算では難しいため、無料の計算ツールを使うのが一番です。
おすすめは vdoto2.com(英語・無料)。レース距離とタイムを入力するだけで、VDOTと5つのペースがすぐに表示されます。
私の直近のレースタイムは以下のとおりです。
・1500m:4分30秒
・3km:9分45秒
・5km:16分58秒
これをvdoto2.comに入力すると、1500mでVDOT 61、3kmでVDOT 59〜60、5kmでVDOT 59が出ました。5kmが最も精度が高い距離のため、私のVDOTは59と確定しています。
③ 短距離と長距離でVDOTが変わる理由
1500mのレースでは、ゴール直前のスパートや全体的なペース配分に「無酸素系」のエネルギーが多く使われます。一方、5kmや10kmは大部分を有酸素系で走るため、VDOTの計算精度が上がります。
実際、私の場合も1500mでVDOT 61、3kmでVDOT 59〜60、5km(16分58秒)でVDOT 59と、距離が長くなるほど数値が安定していきました。これは異常ではなく、距離が伸びるほど有酸素能力の純粋な反映になるためです。5kmのVDOT 59が最も精度が高く、この記事はこの値を基準にしています。
なお、複数の距離でVDOTが異なる場合は、最も長い距離の値を採用するのが正解です。短い距離ほど無酸素系の影響で高めに出るため、5km以上を基準にしてください。
VDOTから5つのペースを決める
VDOTが分かれば、5つのトレーニングペース(E・M・T・I・R)がすべて決まります。以下は主要なVDOT帯の目安です。
| VDOT | Eペース(ジョグ) | Tペース(テンポ走) | Iペース(インターバル) | Rペース(400m) | 参考:1500m |
|---|---|---|---|---|---|
| 55 | 4:47〜5:17/km | 3:51/km | 3:34/km | 1:22 | 4:57 |
| 57 | 4:38〜5:08/km | 3:44/km | 3:28/km | 1:19 | 4:48 |
| 59(私の実測) | 4:24〜4:51/km | 3:38/km | 3:21/km | 1:15 | 4:38 |
| 62 | 4:14〜4:40/km | 3:30/km | 3:13/km | 1:11 | 4:27 |
| 65 | 4:05〜4:30/km | 3:22/km | 3:06/km | 1:07 | 4:16 |
※ 上記はおおよその目安。正確な値はvdoto2.comで確認することをおすすめします。

それまでは“気分”でペースを決めていたので、調子のいい日に飛ばしては故障…の繰り返しでした。VDOTで基準ができてから、練習が一気に安定したんです。
VDOTを使うようになって変わったこと
VDOT 59の私のEペースは4:24〜4:51/kmです。「ジョグ」の設定なのに、想像より速くて驚きました。感覚でやっていたジョグよりも速いくらいのペースで、最初は「これ本当にジョグなの?」と戸惑ったくらいです。
しかも、調子のいい日はこの上限(4:24/km)より速く走ってしまうことが多々ありました。「今日は脚が動くな」という感覚のまま走り続けていたんです。今はそういうときこそ意識して抑えるようにしています。感覚で「ちょっとキツイかも」と思ったら、迷わずペースを落とします。
実際にそのペースで走ってみると、翌日の疲労が全然違いました。以前は感覚だけで走っていて、次の日にどっと疲れることがよくありました。Eペースの上限(4:24/km)を超えないように意識するようになってから、翌日も脚が動く感覚が出てきました。
なお、上限(4:24/km)を守れていれば、4:51/kmより遅くなっても全然OKです。疲れているときや気分次第でもっとゆっくり走ることも大切な練習です。
👉 ジョグ(Easy Run)の詳しい解説はこちら
一方で、T・I・Rのポイント練習は、思ったよりも遅いと感じました。Tペース(3:38/km)は「comfortably hard(きつくはあるが、コントロールできている)」という強度ですが、最初は「もっと速くやらないといけないんじゃないか」と不安でした。
でも、振り返ると悪循環が起きていたことに気づきました。ポイント練習を速くやりすぎる→疲労が抜けない→ジョグもゆっくりにせざるをえない→それでも疲労が残る、という繰り返しです。
VDOTに基づいてポイント練習の強度を下げてからは、EペースでジョグしてもしっかりEペースで走れて、次の練習に疲労を持ち越さなくなりました。「速く走ることが練習になる」という思い込みが、練習の質を下げていたと気づいた瞬間でした。

ただ、VDOTはあくまで目安です。寝不足や24時間勤務明けの日は、数字に縛られず1段ペースを落とすくらいでちょうどいいと思っています。
私の実際のVDOTと、使ってみて変わったこと
ここからは、私自身の数字と実感を正直に書きます。
私のVDOTは59です。5km(16分58秒)の記録から算出した値で、この記事はこの数字を基準にしています。
vdoto2.comに1500mや3000mの記録を入れるともう少し高い数字が出ますが、上で書いたとおり最も長い距離の値を採用するのが正しい使い方なので、5kmの59を自分の値としています。
一番の変化は「強度を調整できるようになった」こと
VDOTを使う前と後で何が変わったか。ひとことで言えば練習の強度を自分で調整できるようになったことです。
それまでは「今日はきつめに」「今日は軽く」という感覚頼りでした。感覚は日によってブレます。調子がいい日はつい飛ばし、疲れている日は必要以上に落とす。その積み重ねが、故障につながっていました。
VDOTを基準にすると「今日のジョグはこのペース」「閾値走はここまで」と数字で決まります。迷いがなくなるぶん、やりすぎることもなくなりました。
5000m 19分台から17分切りまで|効いたのは「怪我をしなかったこと」
私は5000mのタイムを19分台から17分切りまで縮めましたが、その過程でVDOTが果たした役割はひとつです。
無理のない強度で練習できたので、怪我をせずに継続できた。これに尽きます。
速くなるために特別なメニューをこなしたわけではありません。シンスプリントやアキレス腱炎で何度も練習が止まってきた私にとって、「止まらずに走り続けられること」そのものが最大の武器でした。VDOTは、そのための歯止めとして機能しました。
⚠️ 一番大事な注意:目標タイムでVDOTを決めない
これから使う人に、ここだけは伝えたいという点があります。
VDOTは「目標タイム」ではなく「実際のレース記録」から決めてください。
「サブスリーを狙いたいから、そのタイムでVDOTを設定しよう」——気持ちは分かります。でもそれをやると、今の自分の実力より高い強度で練習し続けることになります。行き着く先は、故障か、練習が続かなくなるかのどちらかです。
もうひとつ。使う記録は、できるだけ距離が長く、できるだけ直近のものを選んでください。
短い距離の記録は、その人の持久力よりスピードの要素が強く出ます。また、半年前の記録は今の自分とは別物です。「長い距離」×「直近」——この2つを満たす記録がいちばん実態に近いVDOTを示してくれます。
VDOTを使うときの注意点
- 必ず「全力で走ったレース」のタイムを使う:練習のタイムや流して走ったレースはNG。VDOTが実力より低く出てしまいます。
- タイムは定期的に更新する:トレーニングで実力が上がればVDOTも上がります。半年〜1年に一度はレースで確認するのが理想です。
- コンディションや気温で調整する:真夏・強風・標高の高い場所ではEペースを遅めに調整しても問題ありません。
- VDOTより遅いEペースはむしろOK:ジョグはVDOTの下限より遅くても全く問題ありません。大切なのは頻度と継続です。
まとめ
- VDOTはレースタイムから算出する「実効VO2max」
- 自分のVDOTが分かれば、E・M・T・I・R全ペースが一発で決まる
- 計算はvdoto2.com(無料)で簡単にできる
- 必ず「全力で走ったレース」のタイムを入力する
- Eペースはジョグの設定なのに意外と速い。上限(4:24/km)を超えないことが大切
感覚でペースを決める時代から、根拠のあるペースで走る時代へ。VDOTを一度計算してみると、自分の練習がガラッと変わるはずです。ぜひ試してみてください。
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VDOTの概念を作ったジャック・ダニエルズ博士の著書。ペースゾーンの根拠から練習プランまでこの一冊に詰まっています。


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